お寺の屋根にソーラーパネル!? 災害時には避難所の役割も
2018/12/20
檀家を中心に地域住民が出資
線香などお寺ならでは返礼も
お寺の建物や設備に手を加えるには、檀家の了解を得なければならない。檀家には地域の有力者をはじめ様々な考えの人がいるので、一般的には、太陽光発電について簡単に了解されるとは限らない。しかし、泉福寺では、これがうまくいった。結果的に、太陽光発電システムにかかる費用の多くを檀家たちが出し合う形になったというのだから大成功といって良い。
岡田住職は、太陽光について協議した総代会のときのことを振り返る。「はじめは、お寺の屋根に太陽光といってもピンとこない方もいらっしゃいましたが、とくに大きな反対はなくスムーズに進めることができました。むしろ、『環境に対してプラスになることをしたい』と積極的に賛成してくださる方が多くて嬉しかったです。そういう皆さんの想いを形にするという意味もあって、共同出資というスタイルをとらせていただきました」。
最終的には、檀家を中心に、地域の人たちも加わって約50人の出資者が集まった。出資金は10年後に返金されることになっており、それまでの間は、お寺からお礼の品も手渡される。「ささやかではありますが、線香券や、クッキーなどをお配りしていきます」(岡田住職)ということだ。さらに、売電収益の一部は、環境や平和、社会福祉活動などに取り組む団体へ還元することが計画されている。
人々に愛される太陽光発電
善行を共有するということ
泉福寺に設置された太陽光パネルは、長州産業製304W単結晶シリコンモジュールが40枚、合計12.16kWだ。本堂南面の屋根に10枚、西面の屋根に30枚が載せられている。お寺の屋根ならでは難しさはなかったのか? これについては、工事を請け負った太陽光発電・省エネ設備販売施工会社、カツデンソーラーの坂田勝章社長が答えてくれた。
万一の洪水に備えて2階に据え付けられたパワーコンディショナ。避難所としての機能が失われないよう配慮されている。
「泉福寺さんの屋根は、お寺としては比較的そりが小さかったのでやりやすかったです。ガルバリウム鋼板を重ねた屋根でしたので、屋根の突起部に挟み込むタイプの専用金具で、太陽光パネルを固定しました。この工法なら、屋根材に穴をあけないので、雨漏りの心配も一切ありません。また、お寺は多くの人達が訪れる場所ですから、施工にあたっては美観にも気を使いました」(坂田社長)。
坂田社長は、太陽光の導入を協議する檀家総代会にも呼ばれている。その時の様子については、「岡田住職が総代さんたちから信頼を得ていて、『住職がやりたいなら良いよ』という空気ができていたので進めやすかった」とのこと。泉福寺の太陽光発電は、長年にわたって育まれてきた人と人の絆が、具現化したものなのかもしれない。周囲の環境に違和感なく溶け込み、多くの人達に愛される太陽光発電が、そこにはある。
訪れる人を優しく包み込む、緑豊かな泉福寺の佇まい。
岡田住職は、今後について次のように述べている。「全国には環境や平和のために尽力しているお寺がたくさんあります。善いことは、どんどん共有していきたい。私たちも、同じ地域の寿光院さんや、中野区の福蔵院さんの取り組みなどを参考にさせていただきました。しかし、まだまだ横のつながりが少ないというのが、お寺の現状です。これからは、善い行いをもっともっと共有しあえるよう、ネットワークづくりにも努めていきたいと考えています」。
やがて、日本各地のお寺の屋根に、太陽光パネルが設置される日がやってくるかもしれない。そんな期待さえ抱かせる、岡田住職の眼差しだった。
プロフィール
泉福寺
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取材・文・写真/廣町公則