太陽光パネルも地産地消! 東北復興に向け新工場、始動
2016/08/04

ソーラーフロンティアが宮城県大衡村に新設した太陽光パネル工場「東北工場」が注目を集めている。世界トップクラスの生産コストを追及しつつ、太陽光パネルの“地産地消”にもこだわったという最新鋭の生産拠点だ。
ソーラーフロンティア
東北の工務店と連携強化
「エネルギーの地産地消」とは近年良く使われる言葉だが、ソーラーフロンティア東北工場では、エネルギーを創りだす太陽光パネルそのものの地産地消を目指す。地元で作ったパネルを地元優先で供給していくことを柱に、施工からメンテナンスまで、地元工務店と連携しながら進めていく。
ソーラーフロンティアがこの地に新工場を設けた背景には、「東日本大震災からの復興に貢献したい」との強い想いがあった。同社社長の平野敦彦氏は、「太陽光に関わる仕事を、生産から維持管理まで一貫して地元で回すことで、雇用創出と東北経済の活性化を図っていきたい」と話す。
東北工場への想いを語る、平野敦彦 代表取締役社長。
低コスト化と品質向上を両立
影に強いCIS薄膜太陽電池
東北工場は、ソーラーフロンティアが国内に設けた4番目の生産拠点だ。今年6月に商業生産を開始し、現在、フル稼働に向けて最終調整を行っている。そこには世界をリードする最先端の技術が集約されており、これまでにない低コスト化と品質向上の両立が図られている。
いままでの主力工場と比べて、設備投資額は1MWあたり約30%削減。生産ラインもコンパクト化されており、生産に要する人員は従来の2/3程度(1MWあたり)。さらに、これまで24時間を要していた製造にかかる時間は、8時間程度にまで短縮されている。これらを総合的に推進することで、生産コストの大幅な低減を可能にした。
パネルの製造工程を説明する、久保田肇 東北工場工場長。
東北工場で作られる太陽光パネルは、品質・性能においても、他工場の現行品を凌駕する。エネルギー変換効率は約15%向上し、出力180W以上を実現。新フレーム構造により、水切り性能が向上し、汚れも付きにくくなった。軽量化も図られており、施工性もアップしている。
もともと、一般的な結晶シリコン系太陽電池と比較して、ソーラーフロンティアのCIS薄膜太陽電池には、影の影響を受けにくく実発電量が多いという特長があった。東北工場で生産されるパネルは、このCIS薄膜太陽電池のメリットをさらに高めた新設計ともなっており、影がかかった場合の出力低下がひときわ少ない製品に仕上がっている。
東北が“マザー工場”になる
地域振興の精神を、世界に!
ソーラーフロンティアは今後、太陽光パネルの地産地消をグローバルに推進するため、海外生産拠点の構築にも力を入れていく。東北工場は、そのためのマザー工場となる。東北で磨かれた技術、培われたノウハウをもとに海外に工場を作り、そこで人を雇い、その国の経済にも貢献していける事業スキームを構築する考えだ。
海外工場新設に際しては、東北工場に現地の人を呼び、研修を受けてもらうことになる。東北工場は、太陽光パネルに関する人材交流の場にもなるのだ。東日本大震災からの復興を期して始まったソーラーフロンティアのパネル工場プロジェクトが、その想いとともに世界に拡がり、各国の地域振興につながっていく……そんな日が訪れるのも遠いことではなさそうだ。
写真・取材・文/廣町公則